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福岡地方裁判所 昭和40年(ワ)934号 判決 1966年7月19日

主文

(一)  被告は原告キヤプテンシヤツ株式会社に対し金四九万〇、一六五円及びこれに対する昭和四〇年八月六日より完済まで年六分の割合による金員を支払え。

(二)  被告は原告シルバーシヤツ早瀬株式会社に対し金一九万七、四七〇円及びこれに対する昭和四〇年七月一一日より完済まで年六分の割合による金員を支払え。

(三)  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告らは主文同旨の判決並びに仮執行の宣言を求め、その請求原因として、

一、原告らはいずれもシヤツ類の製造販売を業とする会社で、被告は鹿児島市東千石町六五番地において衣料品商を業とする訴外株式会社まからず屋の代表取締役であつた。

二、原告両会社は右訴外会社に対してシヤツ類を販売し左記の売掛代金債権を有していた。

(一)  原告キヤツプテンシヤツ分

取引期間 昭和三九年一〇月五日より同四〇年六月二五日まで

売渡代金額 七九万七、四八〇円

入金    三〇万円

差引未払残 四九万七、四八〇円

代金支払は毎月二〇日締切り翌月五日払の約であつたから右残代金の弁済期は昭和四〇年八月五日であつた。

(二)  原告シルバーシヤツ分

取引期間 昭和四〇年四月一〇日より同年五月二八日まで

売渡代金額 二四万七、四七〇円

入金    五万円

差引未払残 一九万七、四七〇円

代金支払は毎月二五日締切り翌月一〇日払の約であつたから右残代金の弁済期は同年七月一〇日であつた。

三、右訴外会社は昭和四〇年八月初頃鹿児島地方裁判所に対し会社更生法による更生手続開始の申立をなし同裁判所において同月一六日同会社に対し会社更生手続開始決定がなされたが、原告らはこれより先同月六日右会社の代表者である被告と面談した結果、被告は右会社が原告らに対して負担する左記債務につき個人として重畳的債務引受をなした。

(一)  原告キヤプテンシヤツ分については同会社の売掛代金の内金四九万〇、一六五円

(二)  原告シルバーシヤツ分については全額一九万七、四七〇円

四、よつて原告らは被告に対し右各債務引受金及びこれに対する各弁済期の翌日より完済まで商法所定年六分の割合による遅延損害金の支払を求めるため本訴に及んだものであると述べ、被告の抗弁事実を否認した。

被告訴訟代理人は「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決並びに仮執行免脱の宣言を求め、答弁として、原告の主張事実中

第一項は認める。

第二項中原告両会社と訴外株式会社まからず屋との間に取引があつたこと及びその取引につき同項(一)(二)記載の取引期間、入金額が原告主張のとおりであることは認めるがその余の事実は否認する。

第三項中右訴外会社につき原告主張の会社更生手続開始決定があつたことは認めるが、その余の事実は否認する。

と述べ、

抗弁として、仮に右訴外会社の売掛代金債務につき被告が重畳的債務引受をなしたとしても、その後鹿児島地方裁判所が昭和四一年三月一四日に認可した更生会社まからず屋の更生計画案により原告キヤプテンシヤツの届出更生債権額四九万七、四八〇円のうち五〇%相当額の二四万八、七四〇円を免除したので残債権額は二四万八、七四〇円であるから被告は同原告に対し右の限度の支払義務を負うにすぎないものであり、又原告シルバーシヤツは更生債権届出期間中に、その更生債権の届出をなさず失権しているので、被告は同原告に対し支払義務を有しないものである、と述べた。

証拠(省略)

理由

原告ら主張の一の事実は当事者間に争いなく、二の事実中原告両会社と訴外株式会社まからず屋との間に取引があつたこと及びその取引につき同項(一)(二)記載の取引期間、入金額が原告主張のとおりであることは被告の認めるところであり、その余の事実は証人土井康利、太良木政秀の各証言によつてこれを認めるに十分であり、右認定に反する証拠はない。

三の事実中昭和四〇年八月一六日訴外株式会社まからず屋につき原告主張のような会社更生手続開始決定があつたことは当事者間に争いなく、各成立に争いない甲第一号証の一、二、証人土井康利、太良木政秀の証言を綜合すると、訴外土井康利、同太良木政秀はそれぞれ原告両会社の代理人として昭和四〇年八月六日鹿児島市に赴き、右訴外会社の代表者である被告と前記売掛残代金の支払につき交渉した結果、被告は同会社が(一)原告キヤプテンシヤツに対して負担する売掛代金の内金四九万〇一六五円(二)原告シルバーシヤツに対して負担する売掛代金一九万七、四七〇円の各債務につき、原告両会社に対して被告が個人として重畳的債務引受をなす旨を約し、その旨の各証と題する書面(甲第一号証の一、二)を交付した事実を認めることができる。

被告は右甲第一号証の一、二はいずれも原告らの強迫によつて作成されたものであると主張するが、被告本人尋問の結果中右主張に副う部分及び前記認定に反する部分は前掲土井康利、太良木政秀の証言と対比して措信し難く、他に前記認定を左右するに足る証拠はない。

次に被告訴訟代理人の抗弁について考察する。

成立に争いない乙第一ないし第三号証にすると、被告主張のとおり鹿児島地方裁判所が昭和四一年三月一四日に認可した更生会社まからず屋の更生計画案によると原告キヤプテンシヤツの届出更生債権は五〇%免除され、また原告シルバーシヤツは更生債権届出期間中にその更生債権の届出をなしていないことが認められるが、仮に右更生計画によつて原告らの訴外会社に対して有する債権につき減額或は弁済を受けられない結果になるとしても、右更生計画は更生会社とともに重畳的に債務を負担した被告個人の原告らに対する支払義務については何らの影響を及ぼすものではないと解すべきであり、この趣旨は会社更生法第二四〇条第二項によつても明かであるから、被告の右抗弁は理由がない。

よつて被告に対し前記各債務引受金及びこれに対する各弁済期の翌日より完済まで商法所定年六分の割合による遅延損害金の支払を求める原告らの本訴請求はすべて理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条を適用し、仮執行宣言の申立はこれを相当でないと認めて却下し、主文のとおり判決する。

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